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ゆ!
副会長挨拶

『加齢によるもの忘れと認知症のもの忘れ』  大分大学医学部総合診療部 吉岩あおい


 人口の高齢化に伴い, 認知症患者は増加の一途を辿っています。 認知症は, ありふれた疾患(common disease)であり, 糖尿病や高血圧症などの生活習慣病とも関連があることがわかってきました。 現在、認知症の患者は200万人以上であり, 2030年には, 400万人を超えると言われています。 65歳以上の10人に1人が認知症, 20人に1人がアルツハイマー型認知症であり, 85歳以上の4人に1人は認知症です。認知症は, 脳卒中, 骨粗鬆症とともに寝たきりの原因であり, 早期診断・早期治療により認知機能障害の進行と周辺症状の出現を抑えることができます。

 大分大学総合診療部では, 7年前に「もの忘れ外来」を始め, もの忘れ相談を行っています。 これまでに約1700人が受診されました。実際, 認知機能障害があっても患者や家族は, 何科を受診してよいのか, どう対応したらよいのかわからない場合が多いのです。 「もの忘れ外来」では, まずご本人とご家族から病歴を詳細に聴取し, 神経心理テストや画像診断を用いて, 可能なかぎり早期の段階で診断と治療を行い, 家族への介護指導, かかりつけ医, 介護施設との連携をとっています。

 具体的な検査としては, 神経心理テスト(長谷川式, MMSE), 甲状腺機能などの血液検査, 頭部MRI(またはCT), 脳血流SPECTにより診断を行います。

 認知症のもの忘れが, 健忘によるふつうのもの忘れ(健忘)と異なる点は, 一言で言うと全体を忘れるということです。例えば食事の内容を忘れることは, 単なるもの忘れかもしれませんが, 食べたこと自体を忘れてしまうことが, 認知症のもの忘れです。


 認知症の原因は, アルツハイマー病, 脳血管性, レビー小体型, ピック病など様々あり、 治療可能な認知症として, 甲状腺機能低下症, ビタミンB12欠乏, 脳炎, 正常圧水頭症, 脳腫瘍, 高齢者が転倒し, 頭部打撲後数ヶ月後に起こる慢性硬膜血腫などがあります。 認知症の中でも最も頻度が高く, 半数以上を占めるアルツハイマー病は, 記憶障害や見当識障害(時間や場所がわからなくなる), 判断力の低下が起こり, 早期から何度も同じことを言う, さがし物が多い(時に物盗られ妄想), 作話(つじつま合わせ), 怒りっぽくなるなどの症状が見られます。治療としては, 「アセチルコリン」という神経伝達物質を増やし, 認知機能障害の進行を遅らせる塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)があり, 2011年には, 本邦でも神経保護作用のある薬など3種類の薬が使えるようになります。


 認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らせるように, もし心配なもの忘れがありましたら, まずかかりつけ医に相談することが, 早期発見・早期診断に繋がります。